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通訳翻訳ビジネスレポート No.57 2005/05/30 投稿:血の通った仕事
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◆━2005/05/30 第0057号━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

◇◇通訳翻訳ビジネスレポート◇◇
    http://www.ithouse.net/
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◇目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<投稿記事>
 ◆「血の通った仕事」田中モー子(匿名投稿)

<書籍紹介>
 ◆『現代が受けている挑戦』A・J・トインビー(著) 吉田健一(訳)
 ◆『夜と霧 新版』ヴィクトール・E・フランクル(著) 池田香代子(訳)

<館長室だより>
 ◆「青色のキャンバス」平岩大樹(通訳翻訳館)

<投稿募集>
 ◆「あなたからの投稿を掲載します」


<= 投稿記事 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「血の通った仕事」
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 通訳・翻訳家は、音楽家のように儲からない、といわれる。音楽で食べていける人
は一握りだとしても、その他は無意味なただの落伍者だろうか。人生の折に触れて楽
器を習い、友人しか来なくても演奏会を開く。老いて体が衰えた時、長く親しんだ楽
器や歌で、ひとときの感動を生み、心を慰めることができる。そんな世界を持つ人は
、持たない人に比べ、どれだけの財産が心にあふれていることだろうか。

 収入が限りなくゼロに近い通訳・翻訳者にも、貴重な財産がある。通訳・翻訳の舞
台で一度でも、あがき苦しんだことがある人は、一方通行ではコミュニケーションに
ならないことを、当たり前のように知っている。言葉など完璧ではありえないこと、
そんな中で少しでも心が通い合う時の喜びも知っている。言葉が通じないはずの話し
手と聞き手、読者と著者を結び、新たな感動を生み出すことへの挑戦と、心のときめ
きも知っている。

 世の中にはまだまだ、言葉の使い方の分からない人がいる。自分が誤解される言い
方しかできないのに、通じないことを相手のせいにする人。他人の何気ない言葉に、
必要以上に自分の解釈を加えて傷つく人。言葉のキャッチボールができず、デッドボ
ールをぶつけ合う人々は、自ら孤独を呼び寄せる。悲しみの末に、沈黙の闇へと追い
込まれていく人たちがそこにいる。

 モノがあふれ、情報に事欠かず、識字率はほぼ100%の日本。豊かで文化的なは
ずの国で、言葉が人を切り刻む刃となっている。表現しようとするひたむきな言葉を
圧殺し、言葉の暴力が連鎖され、心を蝕んでいく世界。

 学校で、家庭で、はたまたネットを通じて、親しいはずの者たちが、口論の果てに
殺しあっていく。なぜなのか。読み書き文法だけでは十分でない、人とコミュニケー
ションできる言葉の使い方を、知る者から、知らざる者へと伝えていく役割が、決定
的に果たされていないのではないのか。

 ある貧しい国に、音楽家を目指していた青年がいた。頑張ったが認められないまま
、いつしか老人になってしまった。それでも彼は音楽をやめず、街角でハーモニカを
吹いていた。1人の少年がその前でいつまでも聴いていた。ナイフを持ち、物凄い形
相でこちらを見ながら。

 だが老人は吹き続けた。曲が終わったところで、少年は言った。

「今から飲んだくれの親父を殺して、僕も死のうと思っていました。でも、あなたの
音楽を聴いて、心が変わりました。」

「お若いの、これからハーモニカを教えてやろう。辛いときには音楽に心をぶつけな
さい。」

 音楽家と同じように、通訳・翻訳者が、持っている能力を活かすのは、金になる場
面だけではない。よい通訳者・翻訳者であるために、コミュニケーションの大切な能
力を培うことは、1回やって終わりの作業ではない。日々身近な人、遠くの人と、潤
沢な人間関係を築いていくことが、通訳・翻訳能力の鍛錬の核だ。

 スクールで学ぶ技術一辺倒では許されない。「使ってください、仕事ください」と
走り回るだけが能ではない。通訳・翻訳を通じ、豊かに言葉を使おうとすることで、
心も養われ、世界も変えていくような生き方になればいい。そんなあなたに必ず共感
者は現れ、あとに続く者も出てくるだろう。

 年収いくら稼いだかより、血の通った本物の仕事ができるかどうかが、人間たる通
訳・翻訳者の真価だ。機械に一掃される私たちではないことを信じたい。1人1人の
姿勢が、これからの業界の行方も決するだろう。

(田中モー子=匿名投稿)

 ◇田中モー子
  http://www.bu-min.com


[この記事は通訳翻訳館ウェブサイトにも掲載されています]

 ◇掲載記事
  http://www.ithouse.net/japanese/column/doc/20050530.htm

 ◇いままでの記事一覧
  http://www.ithouse.net/japanese/column/box.htm

 ◇記事を投稿する
  http://www.ithouse.net/japanese/column/send.htm


<= 書籍紹介 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇『現代が受けている挑戦』
■■………………………………………………………………………………………………

【翻訳家】吉田 健一
【原著者】A・J・トインビー
【出版社】新潮社
【発刊年月】2001年12月01日
【本体価格】700円 (税込)
【ページ数】371p
【ISBN】4102230211
【購入】http://www.ithouse.net/japanese/ac/bk_4102230211.htm

──────────────────────────────────────
未来はその時まで隠されているので、私たちは過去に未来を照らす光を求めなければ
ならない。過去における経験は未来を照らすのに私たちに得られる唯一の光である。
経験は歴史の別名である。私たちがいわゆる歴史と言う時、普通人類の経験の総体を
考えいる。しかし私たち一人一人が生涯において積む個々の経験も歴史なのである。
                           本文12pより抜粋
──────────────────────────────────────

 本書は、一つの世界国家の下で地球上のあらゆる組織と個人は統治されうるのかど
うかを探求したものである。人類初の文明となったシュメール、古代ギリシア・ロー
マ、古代エジプト、インダス、中国での史実から教訓を抽出し、世界国家にむけての
課題を提示している。

 人間がつくりあげる社会的、文化的な遺産は常に不安定なものであって不変のもの
でないと著者はいう。いかに優れた統治組織や技術革新を活用したとしても、生命体
の本質である「変化」を止めることはできないのだと。

 西欧文明が世界へ膨張してゆく過程で、各国の独自文化は侵食され、侵略され、犠
牲になった。社会的、文化的遺産は簡単に失われるものであり、技術の進歩によって
距離が消滅したいま、西欧化をさらに推し進めていけば西欧型の世界国家もありえる
のではないかと書き残している。

 ◇そのほかのオススメ選書をみる
   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


■■………………………………………………………………………………………………
■◇『夜と霧 新版』
■■………………………………………………………………………………………………

【翻訳家】池田 香代子
【原著者】ヴィクトール・E・フランクル
【出版社】みすず書房
【発刊年月】2002年11月05日
【本体価格】1575円 (税込)
【ページ数】169p
【ISBN】4622039702
【購入】http://www.ithouse.net/japanese/ac/bk_4622039702.htm

──────────────────────────────────────
勇気と希望、あるいはその喪失といった情調と、肉体の免疫性のあいだに、どのよう
な関係がひそんでいるのかを知る者は、希望と勇気を一瞬にして失うことがどれほど
致命的かということを熟知している。
                           本文127pより抜粋
──────────────────────────────────────

 著者は第二次大戦中、ナチスの強制収容所に収容され生還した精神医学者。本書は
強制収容所に収容された精神医学者として、また生き残ることができた数少ない被収
容者の一人として、収容所での強制労働、食事、生活、病気がどんなものであったの
かを書き残したものである。

 医学者としてあることを学んだと著者はいう。教科書に書いてあることなど「嘘八
百」だということを。人間はどのような環境にも「慣れる」ことができる存在であり
、人間性、人格、自我すらも捨てることができる存在なのだと。

 大切にしてきたものはすべて奪われ、名前すら使われない。単なる「番号」として
扱われた被収容者。生きる意味をなくした被収容者、人間性をなくし堕落していった
被収容者。「いいひと」はけっして、生き残れなかった。それが、強制収容所という
場所だったと告白している。

 ◇そのほかのオススメ選書をみる
   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


<= 館長室だより =>―――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「青色のキャンバス」
■■………………………………………………………………………………………………

 マンサクの花が咲いてから三か月くらい経っただろうか。梅、桃、桜の花が咲き、
あっという間に散っていった。昆虫たちもめざめ、耳をすませば野鳥たちの小さなさ
さやき声が聞こえてくる。

 ツバメが低空飛行で空を舞い、木立の間でシジュウカラたちが仲良くじゃれあい、
メジロが木陰で遊んでいる。梅雨のジメジメ、夏のうねるような熱波を前に、すがす
がしい風が、どこからともなく流れては消えてゆく。

 ベンチに寝そべり、まぶしい青空を眺めてみると、何ともいえない青色のキャンバ
スがひろがっていた。わた菓子のような雲がフワフワとからまってはとぎれ、とぎれ
てはからまって通り過ぎていった。

 いろいろな植物の香りとともに、自然からの贈り物が目の前にひろがっている。い
ま、ちょうどバラの花が満開だ。近所の庭に、公園の花壇に、見事な花を咲かせてい
る。バラの花をじっくりとながめ、その香りを楽しみ、自然の営みを感じた。

(平岩大樹=通訳翻訳館)


[館長室だよりは通訳翻訳館ウェブサイトに掲載しています]

 ◇館長室だより(「バラの花」などをデジカメで撮影しました)
  http://www.ithouse.net/japanese/tayori/20050527.htm

 ◇いままでの館長室だより一覧(館長室)
  http://www.ithouse.net/japanese/director.htm


<= 投稿募集 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

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■◇「あなたからの投稿を掲載します」
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