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通訳翻訳ビジネスレポート No.04 2002/09/29 投稿:翻訳書は誰のためにあるのか
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◆━2002/09/29 第0004号━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

◇◇通訳翻訳ビジネスレポート◇◇
    http://www.ithouse.net/
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◇目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<投稿記事>
 ◆「翻訳書は誰のためにあるのか」

<書籍紹介>
 ◆『「翻訳」してみたいあなたへ』徳岡孝夫(著)

<編集後記>
 ◆「金木犀の香り」

<投稿原稿募集要項>
 ◆「あなたの投稿大募集中!」


<= 投稿記事 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「翻訳書は誰のためにあるのか」
■■………………………………………………………………………………………………

 出版翻訳は翻訳版権ビジネスという側面を持つ。そのため豊富な資金力を持つ数社
の大手出版社が大きなマーケットシェアを握り、資金力のない個人翻訳家や小さな出
版社が入り込める余地は限られている。大半の翻訳家は大手出版社経由で翻訳を任さ
れ、原書の翻訳に取り組む。

 大手出版社の支配体制のもと「本が売れない」、「本を読む人間が減った」、「翻
訳の質が悪いのに売れる」、「出版社の待遇がわるい」、「出版翻訳だけで生活なん
ぞできない」、「読者は翻訳の質がわかるのか」と業界人の不満が続く。だが、いく
らグチをこぼしたところで何も変わらない。

 出版翻訳は大金をかけたビックビジネスだ。出版社側に出版リスクを負わせておき
ながら、「もらい」が少ないと嘆く翻訳者。みっともない。このような翻訳者は出版
社や読者のおかげで翻訳ができるのだという「感謝」の心を忘れている。読者があっ
ての翻訳ではないか。

 株式投資の世界にはハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンという
言葉がある。ハイリターンを望むならハイリスクを選択し、リスクを冒したくなけれ
ば、それなりのリターンで我慢しろという。

 出版社側からの「もらい」が少ないと嘆く翻訳者に翻訳版権交渉、翻訳、出版、広
告宣伝するだけの熱意と意思があるのか。失敗した時の覚悟ができるのか。リスクに
挑戦せず、失敗の覚悟もせず、ただ出版社や読者のグチだけを並べて行動しない翻訳
者に成功や奇跡は起こらない。

 出版翻訳というのは翻訳業界の中で目立った存在だ。翻訳した翻訳書がヒットすれ
ば、たちまち翻訳家に億単位の印税が転がり込む。一方で全く売れない「よみ外れ」
の翻訳本もゴロゴロある。それだけに翻訳家は何のために異国の本を翻訳するのか。
翻訳家にとって原書の著者とは何なのか。翻訳家にとって読者とは何なのか。はっき
りさせておくべきだろう。

 一般読者は「誰が」翻訳したのかなんて気にかけない、細かい言葉の言い回しなん
て問題にしない。読者は素直だ。心を動かされない本は「買わない」。曇った心で翻
訳された翻訳本が読者の心を掴んだり、感動させたり、涙させたり、勇気をあたえる
ことはない。曇った心で翻訳された翻訳本は決まって眠たくなる。そんな翻訳本は宿
題でもないかぎり読まないし、金を出して買わない。

 読者は日本語という文字を追いかけているのではない、文字に表現された著者の心
を読んでいるのだ。たとえ言語表現が幼稚な翻訳書であろうと心に響くものがあれば
、読者は感動する。逆に流れるような美しい日本語でも心に響くものがなければ、読
者は感動しない。

 原書著者がどのような思いで一冊を書き上げたのか、原書著者は何のために書いた
のか、原書著者は何を読者に問いかけているのかを考えない翻訳本が多すぎるのでは
ないか。おまけに読者の心も考えない翻訳本など売れるハズがない。翻訳者は何のた
めに翻訳するのか。翻訳者本人がわからなくなっているのではないか。

 原書著者の心、読者の心を無視したまま「良い翻訳、悪い翻訳」をいくらい議論し
ても不毛だ。そんな翻訳品質規格など読者は求めてはいない。翻訳者の使命は何なの
か、翻訳者の社会的存在価値は何なのかを考えず、ただ大手出版社という大企業にぶ
らさがる翻訳者。そんな翻訳者が「よみ外れ」の翻訳本を生む。
 
 ここで一人の翻訳家を紹介したい。1999年の冬、とびっきり話題になった翻訳
書が一冊あった。それは英国の児童書を翻訳したもので、英国本土で大ヒットした翻
訳書だった。版権エージェンシー、大手出版社はヒット本を見逃さない。あの手この
手を使って版権交渉を繰り広げただろう。でもこの本の翻訳版権は大手出版社に落ち
なかった。

 版権を獲得したのは小さな小さな赤字出版社、しかも無名の翻訳者兼出版社社長だ
った。驚くことに彼女にはまだ翻訳経験も出版経験もなかったという。なぜそんな賭
けを原書著者がしたのか。それは原書著者の心を彼女が掴んだからだ。だから原書著
者は彼女に日本語訳と出版を任せたのだろう。

 たとえ外国でヒットしたからといって日本でヒットするわけではない。むしろ「売
れない」のが常識となっているなか、原書著者の思いを背負い、翻訳者として、出版
社社長として、彼女はハイリスクに挑戦した。彼女の心が原書著者の心と読者の心を
ひとつに結びつけ、翻訳書を読む人に感動をもたらした。だから売れた。

 すでに1000万部を超える空前の大ヒット。彼女はテレビインタビューで「失敗
したら尼寺にいく」つもりだったと告白している。自ら背水の陣をひき、リスクに果
敢に挑戦する人。それは一流のビジネスパーソンに共通する。彼女は一流のビジネス
パーソンだ。そして一流の翻訳家だ。

 リスクに挑戦する翻訳家が増えれば、この出版翻訳業界はもっともっと活性化する
はずだ。翻訳家の挑戦が読者の心を豊かにする。もっと本を読むようになる。翻訳家
は大手出版社などにいつまでもぶら下がっていないで早く卒業すべきだ。翻訳家は自
ら出版社を立ちあげ、異国の原書著者の心を多くの読者に伝えるべきだろう。

 読者は翻訳家の熱意と意思、原書著者の心がわかる。だから、挑戦してほしい。そ
して異国の原書著者の思いを伝えてほしい。読者は素直だ。必ずその熱意と意思に答
える。読者はワクワクする本、ドキドキする本、心を揺さぶられる本に出会うのをい
つも待っている。そのことを忘れないでほしい。

 私は一般読者として、またこの業界に関わる者として異国の文学、経済、技術、そ
のほかもろもろのすばらしい翻訳書を生み出す翻訳家、出版編集者、出版社、その他
出版翻訳に携わる諸先輩方の献身に深く感謝する。(平岩 大樹=通訳翻訳館)


[通訳翻訳館サイトにも掲載されています]

 ◇記事掲載ページ
  http://www.ithouse.net/japanese/column/doc/20020929.htm


<= 書籍紹介 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

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■◇『「翻訳」してみたいあなたへ』
■■………………………………………………………………………………………………

【著者】徳岡孝夫
【出版社】清流出版
【発刊年月】2002年1月18日
【本体価格】1,000円 (税抜き)
【ページ数】253p
【ISBN】4860290046
【詳細】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4860290046/ithouse-22

──────────────────────────────────────
日本では、翻訳者は作家や劇作家よりも一段低く見られている。大間違いである。翻
訳者こそ新しい世界を、読者の眼前に開く。外国の文化を活かすも殺すも翻訳しだい
。                           本文253pより抜粋
──────────────────────────────────────

著者は1930年生まれの元新聞社記者でジャーナリストから翻訳家となった人だ。
アルビン・トフラー『第三の波』、ドナルド・キーン『日本文学史』、などノンフィ
クション物を中心に20冊以上の翻訳書を手がけた実績を持つ。

本書は絶版になった『翻訳者への道』を若い女性の翻訳家志望者向けに編集・加筆し
たものとなっているが、円熟期を迎えた老人翻訳家が「翻訳」という仕事の本当の重
要性を説き、次の時代を担う若い世代の翻訳家志望者に自身の体得した奥義を隠すこ
となく伝授しようとしている一冊とも読める。

第21章〜22章で出版翻訳を「恋愛」、「結婚」に例えながら翻訳権、翻訳エージ
ェンシー、出版社の関係を解説。1989年に「翻訳権料百万ドル」の新記録を樹立
したタトル・モリ・エージェンシーの故森武志氏がどのような役割を果たしていたの
か。『スーカレット』をめぐって動いた巨大翻訳権ビジネスの実態を明かす。


<= 編集後記 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

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■◇「金木犀の香り」
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 編集部のひらいわです!

 外に出ると金木犀(きんもくせい)の甘い香りがプ〜ンとしてきます。すっかり長
袖の厚いワイシャツを着る季節。ところで、この3ヶ月の間に翻訳関連メルマガが増
えましたね。

 メルマガの発行主体は会社だったり、個人だったりするようです。また翻訳家のな
かにも自らウェブサイトを立ち上げ、情報発信するようになってきました。いいこと
ですね。この保守的な翻訳業界にも変化の兆がみてとれます。

 対称的に通訳業界の動きは鈍く、特に動きはありません。通訳者のサイトなんて数
えるくらいしかありません。通訳業界は通訳養成スクールばかり元気がよくって、通
訳者の声はあまり聞こえてきません。きっと、忙しいのでしょう。


<= 投稿募集 =>――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「あなたからの投稿を掲載します」
■■………………………………………………………………………………………………

 「通訳翻訳ビジネスレポート」ではメディアが取り上げない通訳翻訳業界の現状を
取り上げ多くの方々と情報共有するべく投稿原稿を幅広く取り上げております。応募
の資格は「通訳翻訳ビジネスレポート」の読者であればどなたでも応募いただけます


 原稿内にはご自身のホームページの表記も認めますが、表記によるトラブルについ
ての責任は一切負いかねますのでご了承ください。なお、応募原稿全てを掲載したい
ところですが編集部が掲載を判断したものに限らせていただきます。

 原稿は下記の体裁でお送りください。掲載の成否は1週間以内に必ずご連絡いたし
ます。採用させていただいた原稿は通訳翻訳館ウェブサイト「投稿コラム」に掲載し
「通訳翻訳ビジネスレポート」メールマガジンにも掲載させていただきます。なお将
来的に「投稿コラム」は出版物として出版する可能性もありますのであらかじめご了
承ください。

 応募原稿体裁―「通訳」または「翻訳」をキーワードに政治・経済・文化などにつ
いてのあなたご自身のご意見を1行全角38字詰め、総字数1000字〜2000字(見出しを
含む)にまとめ、下記アドレスへお送りください。メールアドレスのみの匿名による
応募も受け付けますが会社名、氏名、メールアドレス、ホームページURLの表記を
ご希望の方は記入ください。

 原稿の成否に関するお問い合わせ、及び成否の理由についてのお答えは一切できま
せんのでご承知おきください。お手数ですが、送信メールの件名には必ず「投稿」と
いう文言を記入してください。

 随時募集いたしております、奮ってご応募ください。 
 投稿先メールアドレス:column@ithouse.net


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