BackNumber
通訳翻訳館
マガジン概要 マガジン登録 マガジン解除 マガジン見本 よくある質問 登録数状況 登録者属性


通訳翻訳ビジネスレポート No.58 2005/06/06 投稿:死体安置所から
Mag2 Logo
通訳翻訳ビジネスレポート』メールマガジンで新着情報をお届けします(登録無料)


◆━2005/06/06 第0058号━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

◇◇通訳翻訳ビジネスレポート◇◇
    http://www.ithouse.net/
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


◇目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<投稿記事>
 ◆「死体安置所から」田中モー子(匿名投稿)

<書籍紹介>
 ◆『愛  一語の辞典』柳父章(著)
 ◆『教養としての言語学』鈴木孝夫(著)

<館長室だより>
 ◆「セキレイと子ガモ」平岩大樹(通訳翻訳館)

<投稿募集>
 ◆「あなたからの投稿を掲載します」


<= 投稿記事 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「死体安置所から」
■■………………………………………………………………………………………………

 子供を産んだ。産院にいる間、小田実の『私と朝鮮』を読んだ。1977年生まれ
、27歳の妹が、美しく着飾って見舞いに来た。しかし同じ年生まれのこの本は、表
紙も中も見るからに老けていた。注文しても区立の図書館にはなく、都立図書館の書
庫から、1ヶ月かけて届いた。死体安置所から、まさかの指名を受けて出番を迎えた
選手のようだ。

 昔の本を読むだけで、自分の知らない時代にタイムトリップできる。「社会主義」
という言葉が生きていた時代。北朝鮮はこれから農業も工業も、伸びていく可能性が
十分にある、と書かれている。まるで別世界のおとぎ話を読んでいるように感じた。

 当時のニュースで毎日踊っていたであろう言葉達が、まさしく死語になった今、本
の中ではゾンビのようにいきいきとよみがえり踊っている。おばあさんのみならず、
27歳の若者でさえ、これだけの年月を1人で背負って生きているのだ。古い本が、
過去を忘れる人間たちに、謙虚さを教えてくれる。

 私たちはいつからどのように、「社会主義」という言葉への意識を変えていったの
だろうか。時はなんとなく過ぎていく。1977年某月某日に、確かに生きていた人
であっても、その時の意識に照準を合わせろというのは無理だ。人間は誰も今しか生
きられない。本を読んでいても、どういう背景でいっているのか、全く分からない文
章が多くあって、もどかしさを感じた。

 では、今の「社会主義」はどういう言葉なのか。今でも社会主義を目指して200
5年を生きている人もいる。1つの単語はなんと幅を持ったものだろうか。言葉は何
回も死に、生まれ変わっていることを、今さらのように気づいた。改めて、古い書物
を訳すことの難しさも実感せざるをえない。

 本にはまた、このようなことも書かれている。道々に金日成さんの銅像ばかり置い
てあるのはいかがなものか。プロパガンダのやりすぎもあまりうまくない。しかし、
それだけで北朝鮮を、怪しい国とただ揶揄の対象にし、人々の暮らしや今後のゆくえ
に、本当の関心を持たない人たちが多すぎる、と。まさに21世紀に入った今でも、
全く同じ日本人の意識の低さがある。

 「韓国とは朴正煕さんのことではない。北朝鮮も金日成さんのことではない。一般
人たちのことを考えなければならないし、そのためには自分で知ろうとしなければな
らない」ということも書いてあるが、27年たっても相変わらず教訓は活かされてい
ない。

 死語にならない言葉がある。後世の人間に、時を超えてうなずかせる言葉を贈るこ
ともできる。病室のテレビを見た。今産んだ子供が駆け出し社会人になるころには、
この情報はほとんど全部ゴミだ。まことしやかに知識人がしゃべっている言葉達が死
語になり、私の全く知らない概念が世界を席巻するだろう。

 私は子供に、後世に、何を伝えたくて言葉をつむぐのか。どんなにがんばっても、
ゴミだらけのものしか作れない、だが、その中で不変の真実を、生き残る教訓を、ど
んな言葉で残すのか。自分の中の辞書をアップデートしていけるだろうか。流れてき
た年月と、自分で作り上げた、ひとりよがりなボキャブラリーに、すでに傲慢になっ
ていないだろうか。

 これからだんだん年をとる。いつか子供の世代が書いた本を読み、新しい日本語に
へぇ、と微笑める自分でありたい。「母ちゃんの頭は古いよ!」そんな罵声を浴びる
のも楽しみだ。そして私の残した仕事の1つでも、「これはいいね」と若者に言って
もらえるなら、まさしく人生の本望だろう。

(田中モー子=匿名投稿)

 ◇田中モー子
  http://www.bu-min.com


[この記事は通訳翻訳館ウェブサイトにも掲載されています]

 ◇掲載記事
  http://www.ithouse.net/japanese/column/doc/20050606.htm

 ◇いままでの記事一覧
  http://www.ithouse.net/japanese/column/box.htm

 ◇記事を投稿する
  http://www.ithouse.net/japanese/column/send.htm


<= 書籍紹介 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇『愛  一語の辞典』
■■………………………………………………………………………………………………

【著者】柳父 章
【出版社】三省堂
【発刊年月】2001年05月10日
【本体価格】1050円 (税込)
【ページ数】101p
【ISBN】4385422036
【購入】http://www.ithouse.net/japanese/ac/bk_4385422036.htm

──────────────────────────────────────
いったん発言され、とりわけ文字として残された言葉は、決してその発言者の意図の
ままにはならない。その言葉は、翻訳者や発言者の手を離れて後、独自の生命体のよ
うに動きだしていく。およそ翻訳語の歴史上、このような意味の変遷の過程は至る所
に見いだすことができる。
                           本文41pより抜粋
──────────────────────────────────────

 本書は翻訳語「愛」が持つ独特の語感には何が隠されているのかを探求したもので
ある。現代日本語「愛」のなかには、どのような意味や概念が埋もれているのか、古
代日本における翻訳語「愛」、明治からはじまる翻訳語「愛」の違いを明らかにし、
現代日本語のなかで生き続ける「愛」を捉え直していく。

 万葉集に残された古代中国語からの翻訳語「愛」、明治に完成したキリスト教聖書
の日本語訳に出現する「愛」。古代日本語「愛」は、日本語訳聖書「愛」と出会い、
新たな役割を背負ったと著者はいう。

 古代ギリシャを起源とする「エロス」と「アガペー」が、どのようにして西洋キリ
スト教文化圏のなかで「ラブ」や「リーベ」に翻訳されていったのか。聖書翻訳に命
のかけた翻訳者が造りだした翻訳語が、どのようにして現代日本語「愛」の中に受け
継がれているのかを明らかにしている。

 ◇そのほかのオススメ選書をみる
   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


■■………………………………………………………………………………………………
■◇『教養としての言語学』
■■………………………………………………………………………………………………

【著者】鈴木 孝夫
【出版社】岩波書店
【発刊年月】1996年09月20日
【本体価格】819円 (税込)
【ページ数】239p
【ISBN】4004304601
【購入】http://www.ithouse.net/japanese/ac/bk_4004304601.htm

──────────────────────────────────────
翻訳語を誕生させるにあずかった力は、外来語の場合と同じく、外国語によって語彙
体系に加えられた干渉にほかならない。したがってこれまで同一の言語問題として考
えられたことのない外来語と翻訳語は、ともに外部から加えられた言語干渉に対する
言語上の対応策という意味では、表裏一体の関係にあるものなのである。
                           本文223pより抜粋
──────────────────────────────────────

 本書は記号言語学の研究から言語の本質を探ったものである。人間にとって言語と
は何なのか、文化文明にとって言語とは何なのか、日本人にとって日本語とはどのよ
うな言語なのかを掘り下げていく。

 文字の重要性が高まった現代社会であっても、人間の言語の実体は音声にあるのだ
と著者はいう。ことばを記号論的な観点から分析してみれば、人間の言語も小鳥や蜜
蜂が用いることばと比較することができ、実際に比較してみることで人間の言語の特
徴を捉えようとしている。

 キリスト教的世界観や進化論的な見方に基づく西欧言語学の盲点を突きながら、人
間の言語を考える上でヒントとなる研究事例を紹介し、日本語における外来語の問題
、文化文明と言語の関係、言語間の言語干渉の問題を取り上げている。

 ◇そのほかのオススメ選書をみる
   http://www.ithouse.net/japanese/bookshop.htm


<= 館長室だより =>―――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「セキレイと子ガモ」
■■………………………………………………………………………………………………

 石神井川でカルガモの親子をみつけた。去年も同じ場所でカルガモ親子をみかけた
が、その親ガモは警戒心が強く、じっくり子ガモを観察する時間などくれなかった。
今年は、観察ポイントがよかったのか、それとも人慣れしているカルガモのようで、
じっくりと観察することができた。

 水草の根元あたりに小魚やタニシがいるらしく、親子ともども水草の根っこにくち
ばしを突っ込んで餌を探している。母ガモが「ガア、クワ、ガア、クワ」いいながら
子ガモたちに餌の取り方、川での泳ぎ方などを教えているようだった。

 集中豪雨の後だったこともあり、川の水は澄み、川の底がよく見える。たまに、ザ
リガニが川底をはっていたりすることもあるのだが、鳥類の繁殖期であるこの時期に
表に出てくることはない。

 カルガモ親子を観察していると、川の上を飛びまわる鳥たちがいるのに気がついた
。ツバメとハクセキレイだ。ツバメは飛び方ですぐわかるが、ハクセキレイほうは名
前すらわからなかった。今回、ハクセキレイの求愛ポーズを撮影したことで、この鳥
の名前を知ることができた。

(平岩大樹=通訳翻訳館)


[館長室だよりは通訳翻訳館ウェブサイトに掲載しています]

 ◇館長室だより(「バラの花」などをデジカメで撮影しました)
  http://www.ithouse.net/japanese/tayori/20050602.htm

 ◇いままでの館長室だより一覧(館長室)
  http://www.ithouse.net/japanese/director.htm


<= 投稿募集 =>―――――――――――――――――――――――――――――――

■■………………………………………………………………………………………………
■◇「あなたからの投稿を掲載します」
■■………………………………………………………………………………………………

 「通訳翻訳ビジネスレポート」ではメディアが取り上げない通訳翻訳業界の現状を
取り上げ多くの方々と情報共有するべく投稿原稿を幅広く取り上げております。応募
の資格は「通訳翻訳ビジネスレポート」の読者であればどなたでも応募いただけます


 原稿内にはご自身のホームページの表記も認めますが、表記によるトラブルについ
ての責任は一切負いかねますのでご了承ください。なお、応募原稿全てを掲載したい
ところですが編集部が掲載を判断したものに限らせていただきます。

 原稿は下記の体裁でお送りください。掲載の成否は1週間以内に必ずご連絡いたし
ます。採用させていただいた原稿は通訳翻訳館ウェブサイト「投稿コラム」に掲載し
「通訳翻訳ビジネスレポート」メールマガジンにも掲載させていただきます。なお将
来的に「投稿コラム」は出版物として出版する可能性もありますのであらかじめご了
承ください。

 応募原稿体裁―「通訳」または「翻訳」をキーワードに政治・経済・文化などにつ
いてのあなたご自身のご意見を1行全角38字詰め、総字数1000字〜2000字(見出しを
含む)にまとめ、下記アドレスへお送りください。メールアドレスのみの匿名による
応募も受け付けますが会社名、氏名、メールアドレス、ホームページURLの表記を
ご希望の方は記入ください。

 原稿の成否に関するお問い合わせ、及び成否の理由についてのお答えは一切できま
せんのでご承知おきください。お手数ですが、送信メールの件名には必ず「投稿」と
いう文言を記入してください。

 随時募集いたしております、奮ってご応募ください。 
 投稿先メールアドレス:column@ithouse.net


┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
◆発行者:ウッドロック 通訳翻訳館
〒1770035 東京都練馬区南田中4丁目26番地11号
◆ホームページ
http://www.ithouse.net/
◆メルマガ新規登録
http://www.ithouse.net/japanese/mmn/registration.htm
◆メルマガ配信停止
http://www.ithouse.net/japanese/mmn/remove.htm
◆ご意見・ご感想など
mm@ithouse.net

………………………………通訳翻訳館が発行するメルマガ………………………………

「通訳/翻訳のお仕事発見!」〜求人情報配信メルマガ〜
http://www.ithouse.net/japanese/mm/registration.htm
「通訳翻訳サービス提供者発見!」〜サービスプロフィール配信メルマガ〜
http://www.ithouse.net/japanese/mmw/registration.htm
「翻訳家で選ぶビジネス翻訳書」〜ビジネス翻訳書の紹介メルマガ〜
http://www.ithouse.net/japanese/mmt/registration.htm

mag2
ID:0000090656
melma
ID:m00064026
Macky
ID:ithouse-mmn
カプライト
ID:6241

★上記のメールマガジン発行システムを利用して発行しています。
★配信解除依頼は受け付けておりません。解除はご自身でお願い致します。
★記事および内容をいかなる形式であれ許可なく転載することを禁じます。
★Copyright (c) 2005 ウッドロック 通訳翻訳館 All Rights Reserved.
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

通訳翻訳ビジネスレポート』メールマガジンで新着情報をお届けします(登録無料)

Powered byまぐまぐ
記事一覧




マガジン概要 マガジン登録 マガジン解除 マガジン見本 よくある質問 登録数状況 登録者属性



You are here > Home > メルマガ > 通訳翻訳ビジネスレポート > マガジン見本 > 2005/06/06配信

通訳翻訳館


ホーム新着求人通訳求人翻訳求人求人掲載メルマガコラムブログTwitter館長室広告免責運営
通訳/翻訳のお仕事発見!通訳翻訳サービス提供者発見!通訳翻訳ビジネスレポート翻訳家で選ぶビジネス翻訳書
フリーランスの書架ビジネスセンスを磨く本独立開業のための本仕事獲得のための本キャリアデザインの本
プロフェッショナルの書架通訳者が書いた本翻訳者が書いた本日本語を磨く本異文化を学ぶ本