先日ドイツのZDF放送の番組でチャップリンの娘さんが登場、参加者がある行動を賭け、成功するかどうかを有名人が賭けをします。賭けに負けた有名人は罰則を事前に司会者に告げ決めておいたことを負けた場合にカメラの前でしなければなりません。
チャップリンさんはその参加者に“ I cross my finnger ”指をクロスしていますよと英語で話したのを、ドイツ人の同時通訳の方は“ Ich Drucke meine Dame ”親指を握っていますと即時に通訳されたのには感激しました。意味はどちらもあなたが成功することをお祈りしていますとでも訳すべきだとおもいます。
通訳は翻訳よりも表向きは簡単だと自分は思います、いってしまったら終わりです、後は通訳ではなく弁解することにならないことが上手な通訳です。翻訳は考える時間と調べる時間がありますから難しいとおもいます。
時々、自分も考えすぎてどのように翻訳すべきか考えてしまいます。翻訳会社は間違えがなければいいのかも知れませんが、単に単語の間違えのことをいっているのではありません。自分は32年のドイツ生活で得た実生活からのドイツ語通訳ですので、肩書きなどはありません。
Diplomを取得された通訳のかたがたには頭があがりません。そのかたがたの勉強する努力は自分はしていなかったのだと自覚しています。そんな中で先日とてもいやな思いをしてしまいました。
日本からこられて通訳につかれた方なのですがDiplomと学士号をお持ちなのですが、そのドイツと日本の方の話がかみ合っていないのが、そばにいて痛感してしまったのです。何度か口をはさみたかったのですが……。
要するにその方の通訳は日本語がベースのため日本語的なドイツ語の話し方で、ドイツ人にはその彼女のつかった単語がどのような意味で使ったのか理解できなかったそうです。
またドイツ人と日本の方の話の内容が通訳の方が理解できなかったのではないでしょうか? 後日、そのドイツの方とこの催し物がきっかけで、居酒屋で飲みましたが、何度もそのときの話をされ、できれば日本の方に伝えてほしいといわれています。
なぜ三島由紀夫が川端康成の著を翻訳して川端がノーベル賞をもらえたのでしょう、ロシアの歴代首相がいつも同じ通訳をつかっているのでしょうか? ゴルバチョフ首相が東ドイツで時に遅れるものは時が罰すると言うような発言をして、ドイツ人が感激したことがありました。
しかし後に彼はドイツでのインタビューで、あたしはそのような単語は使っていないが通訳が私のロシア語の意味を実にうまくドイツ語化したんだ、といっていました。とかく責任問題をあげる今日、私は内容で判断されるべき異国語の仲立ちを続けていきたいと思います。
最後にこの件に似た事件のお話です。ある日本の音響会社の社長さんが欧州の販売店会議で当時まだユーロに統一されていない時期でしたが、“われわれは1ミリオンビジネスを目標にしましょう”と英語で提案されました。
早速イタリアの代理店から“われわれは毎日1ミリオンビジネスを達成している”と回答があり、欧州の参加者はみないっせいに大爆笑でした。きょとんとしていたのはどこの方でしょうかはいまさら言わなくてもわかっていただけると思います。
私が言いたいのは言葉は生き物、生活から出ているので辞書だけの勉強ではまことに陳腐な通訳になりかねないことをわれわれ通訳が自覚しないと恥をかいてしまうことになるのではないでしょうか。
|